126 研究系及び研究施設の現状
夛 田 博 一(助教授)
A -1)専門領域:有機エレクトロニクス、分子スケールエレクトロニクス
A -2)研究課題:
a) 有機薄膜電界効果トランジスターの作製と動作機構の解明 b)ナノギャップ電極の作製と有機デバイスへの応用
c) シリコン−炭素ナノインターフェースの構築 d)ツインプローブ S T M の設計・製作
e) スピン偏極 S T M の開発
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) 電極の作製のために必要なクリーンルーム環境とフォトリソグラフ装置,電子ビーム蒸発源の整備を終え,F E T の 作製から計測までを行うことが可能となった。試料として東京工業大学・山下敬郎教授の合成によるB T QB T を用い たところ,非常に大きな電界効果移動度を示すことがわかった。さらに,電極種類や構造の違いにより,F E T 動作が 異なることがわかり,デバイスシミュレーターを用いて,キャリア注入・輸送機構の解明を行っている。また,フタロ シアニン薄膜の F E T を電気化学的手法で作製し,ウェットプロセスへの可能性を開いた。
b)リソグラフィー法により作製したマイクロギャップ電極を,電気メッキにより太らせ,ナノメーターサイズのギャッ プを有する電極を作製した。現在,そのギャップ内に有機ナノグレインを挟み込み,電気特性,F E T 特性を調べてい る。
c) 水素終端シリコン(111)面に1−アルケンなど末端に2重結合を有する分子を反応させることにより,均一な単一分 子薄膜の作製を行ない,その構造を原子間力顕微鏡(A F M),接触角測定,分子シミュレーションにより調べた。さら に,神奈川サイエンスアカデミーの大西洋,石橋孝章博士のグループによりSF G測定を行い配向に関する考察を行っ ている。さらに,導電性A F Mによりシリコンを局所陽極酸化することにより表面をナノスケールでパターニングし, 特定の場所に特定の分子を埋め込む手法を確立した。
d)装置開発室と共同で,2つの探針が独立に動くツインプローブS T Mの開発に着手した。除震台,粗動機構の選定と, 微動機構(ピエゾスキャナー)の設計を終え,まず単独のS T Mの作製と動作確認,続いて探針先端にナノチューブを 固定化して,ツインでの動作確認を行う。
e) スピン偏極率の高い電子を放出する探針の作製のため,既存の超高真空ST M装置に探針処理室を設計し,増設した。 最初の試料としては,磁性金属を選び,清浄表面を得るためスパッタ−アニールの条件を押さえている。
B -1) 学術論文
N. TROMBACH, H. TADA, S. HILLER, D. SCHLETTWEIN and D. WOHRLE, “Photovoltaic Junction Properties of Ultrathin Films of Phthalocyaninatooxovanadium (PcVO) on H-terminated N-Si(111),” Thin Solid Films 396, 109 (2001).
研究系及び研究施設の現状 127 B -4) 招待講演
H. TADA, “Organic Field Effect Transistors, From Film to Molecule,” Workshop on NT, IT, BT and Polymers, Kwangju (Korea), April 2001.
H. TADA, “Evaluation of Carrier Mobility of Organic Semiconductors Using Field Effect Transistors,” Korea-Japan Joint Forum 2001, Seoul (Korea), September 2001.
B -6) 学会および社会的活動 学協会役員、委員
応用物理学会有機分子バイオエレクトロニクス分科会常任幹事 (1995-1997, 1999-2001). 電気学会ハイブリッドナノ構造電子材料調査専門委員会委員 (1997-1999).
化学技術戦略推進機構 インターエレメント化学ワーキンググループ委員 (2000-2001). 化学技術戦略推進機構 コンビナトリアル材料化学産官学技術調査委員会委員 (2000-2001). 学会の組織委員
光電子機能有機材料に関する日韓ジョイントフォーラム2000 組織委員 (2000, 2001).
環太平洋国際化学会議におけるシンポジウム “Ordered Molecular Films for Nano-electronics and Photonics,” 組織委員 (2000).
学会誌編集委員
「表面科学」編集委員 (1994-1996).
B -7) 他大学での講義、客員
京都大学工学研究科電子物性工学専攻 , 「分子エレクトロニクス」, 2000 年 , 2001 年後期 . 東京工業大学応用セラミックス研究所 , 非常勤講師 , 2001 年 2 月 .
C ) 研究活動の課題と展望
21世紀にはオプトエレクトロニクス分野において,有機材料がますます重要な役割を果たすと思われる。ひとつは薄膜デバ イスであり,もうひとつは分子スケールデバイスである。前者では,すでに有機発光ダイオードは実用化され,電界効果トラン ジスターも実用化に向けて開発競争が行われている。企業の参入も始まり,今後は産学連携の重要性が増すと思われる。高 機能化のためには,分子の設計に加え,分子組織体としての設計が不可欠であり,配向・配列制御技術の確立とキャリア輸 送機構の解明を通じて高機能化の指針を与えることを目標とする。さらに,材料に最も適した電極種類や構造等の最適化 を図り,システム全体としての特性の向上をめざすとともに,作製・測定・解析手法の標準化を行うことが重要である。後者で は,すでにナノギャップ金属電極や走査プローブ顕微鏡を用いた2端子系の構築は技術的には終え,今後はナノグレインや 分子系の接続技術と計測,その解釈に力点が置かれる。報告はではじめているが,再現性に問題があることが指摘されて おり,安定なインターフェースの構築がますます重要になると思われる。